お客様に選ばれたい。片思いの人に選ばれたい。就職活動の志望企業に選ばれたい。人生には「選ばれたい」と思うことがたくさんあります。そんなとき、どうすれば選んでもらえるのか。これを考える手法がAB3Cです。
AB3Cの解説動画(2020年度版)選ばれる理由
人生にはたくさんの競争があります。競争相手よりも自分を選んでもらいたい。そのためにはどうすればよいか。じつは、これを考えるのは簡単ではありません。
例えば、誰でも経験したことがある恋愛のシーンを考えてみましょう。好きなあの子に選んでもらうにはどうすればよいでしょうか。それを考えるには、前提として知らなければならないことがたくさんあります。彼女の好きなタイプはどんな人でしょうか。今好きな人はいるのでしょうか。いるとしたら、それはどんな人でしょうか。そもそも自分と全く逆のタイプが好きだったら、選んでもらえる可能性は低いです。もっと言えば、自分に全く関心がない人とお付き合いして、本当に幸せにできるでしょうか。幸せにできないとしたら、それは自分にとって相性の良い人ではないのではないでしょうか。それでも、本当に好きといえるのでしょうか。こんな風に、考えれば考えるほど、知らなければならないことが多いですし、考えなければならないことが多くなります。
「こうだったら、こうなる」、「ああだったら、ああなる」というふうに、条件の組み合わせのパターンを数百も検討しなければならなくなってしまいます。その結果、考えきれなくなって、決断ができなくなってしまいます。
ふつうの人は、このようなたくさんの要素が絡んだ、構造的な問題に対して判断をした経験は多くありません。不慣れだからこそ、問題の複雑さを理解せず、簡単に判断できると思いこんでしまい、これを頭の中だけで整理しようとしてしまいます。しかしこのような複雑な問題を頭の中だけで整理しようとすることは、紙とペンを使わずに方程式を解こうとするようなものです。囲碁や将棋の上級者のように、頭の中で100手先まで読むような思考能力がなければ無理でしょう。こんな時は、紙とペンをもって、「こうなった場合」、「ああなった場合」とパターンを書き起こしながら、整理して考えなければなりません。
こんな時に効果的なのが、競争環境において「選ばれる理由」を明らかにする方法、AB3Cです。3Cと呼ばれる顧客(Customer)、自社(Company)、競合(Competitor)と、顧客が求めている価値(Benefit)、優位点(Advantage)の五つの要素に絞り込んで考えることで、どうすれば選んでもらえるのかがぐっと考えやすくなります。たくさんのAB3Cを書き起こすことで、もっともよい選択肢をあぶりだすことができます。
競争において、ライバルよりも優位に立つ、ということは、古くから研究され続けているテーマです。いわゆる「戦略」と呼ばれているものがそれです。戦略というと難しく聞こえますが、実は誰でも日常的に考えていることです。だれでも欲しいものや実現したいことがあるけど、それに使える時間やお金は限られている。それでも自分の理想を実現するためには、どうすればよいのか。これが戦略です。まさにこんなときにAB3Cは役立ちます。仕事だけでなく、私生活においても、広く応用できます。
直感的に学べる
AB3Cは、もともと世界的なコンサルタントである大前研一さんが提唱した、3C分析という考え方をベースに、(株)ゴンウェブコンサルティングが発展させ、誰にでも使いやすくしたものです。
大前研一さんの3C分析は経営戦略立案などに使われているものですが、これだけで完結するものではありません。重要なことを決めるには、3つのCの議論だけでは不十分で、ほかにもPEST分析と呼ばれるような社会の変化の分析や、STPと呼ばれるターゲットの絞り込み、4Pや4Cと呼ばれるマーケティングの企画など、たくさんの分析や整理を組み合わせて使うものです。しかし、このようにたくさんの分析や仮説を重ねて戦略を立てていくことは素人にはなかなかできません。
そこで、いろいろな分析や企画を一つの図の中で「直感的に」行えるようにしたのがAB3Cです。2010年代の日本でAB3Cが生まれたのは必然でした。インターネットの登場によって、消費者はたくさんの情報、たくさんの選択肢を手に入れられるようになりました。かつては広告や価格だけで商品を販売していた大企業も、消費者から「選ばれる」ためにはどうすればよいのかを考えなければならなくなりました。その解決方法が求められていたのです。
大企業だけではありません。中小企業や個人事業主も含めた、すべての企業、個人が比較されるようになりました。すべての企業にとって、「選ばれる理由」は必須のものとなったのです。そこで、中小企業の戦略を支援する現場で、練り上げられた手法がAB3Cなのです。
デザインに効く
AB3Cが生まれた理由は、じつはもう一つあります。戦略は全体の設計図であり、立案した後により具体的な業務の指示書として翻訳され、日々の仕事に反映されてゆきます。しかし、従来の論理と事実を積み重ね、具体的、客観的に戦略を定義していくやり方では、目に見えない価値であるサービスの指示や、直感的な印象を表現するデザイン指示の仕方としてはわかりづらいものでした。落語にある「目黒のさんま」のような皮肉な話です。たくさんの人の吟味によって、本当のおいしさが損なわれてしまうのです。そうならないように、これからは戦略を抽象的、直感的に共有し、サービスやデザインに翻訳しやすくするための「デザイン思考」という考え方が必要だと言われています。抽象的な戦略立案方法であるAB3Cは、まさにこの「デザイン思考」で戦略を考えるのにぴったりの方法なのです。
共有と、目に見えない価値への反映を大事にしているAB3Cだからこそ、以下の3点が備わっているのが良いAB3Cだと考えています。
- ・わかりやすい
- ・信頼できる
- ・ワクワクする
この3つの感覚を共有できれば、戦略を実現できる可能性が高まります。